誰も何もしなかった
ただ目だけが彼を哀れんでいた
彼の叫びに行き場所はない
彼の存在をかき消すように
構内アナウンスが流れた
彼が何を求めてここへ迷い込んだのか
誰も気にもとめない
飢えや寒さを少しでもしのごうとする彼に
誰も自分自身を重ねたくはない
けれど現実は同じだ
彼に見せつけられていることこそが
自分のいる世界なのだ
目をそらしてしまうのも無理はない
結局彼は駅員にプラットホームから
引きずり出されてしまった
彼は彼なりに幸福になりたかっただけ
何が中心に回っているのだろう
僕等よりも
生きることに真剣な彼は
それでも社会の前に潰されてしまった

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.