真っ暗な部屋の中で僕はぼーっとしていた
本当に静かな夜だった
不意に携帯電話が鳴った
友人のTからだ
彼が普段かけてくるには遅すぎる時間だった
「朝早くに父が亡くなった。」
彼の声は少し疲れていた
彼の父が入院したと聞いてからまだ一週間も経っていなかったはずだ
短い会話の後
僕は二人の共通の友人でもあるKに連絡を取りTの父が亡くなったことを告げた
Kも3年前に父親を亡くしていた
僕等はこれから出向くには不謹慎な時間帯だと言うことは十分に解っていたのだが
Tに顔を見せるべきだと言うことで一致し
焼香をあげに行くことにした
通夜はTの自宅で行われていて
彼の親類の人たちが言葉少なに座っていた。
着の身着のままの二人を怪訝そうに見上げたが
Tが友人だと言うことを告げると黙って頭を下げた
「落ち着いたら連絡する。来てくれてよかった。本当にありがとう。」Tが笑った
僕等はやるせないままTの家を後にした
Kが「家で飲んでくか?」と酒を飲む仕草をした
明日の仕事のことが一瞬頭をよぎったが
このまま帰ってもなんだか眠れない気がしてKの誘いに応じた
結局僕等は痛飲した
気がついたときには夜中の3時を過ぎていた
Kの奥さんが湿った空気を変えようと色々気を使ってくれたのだけれど
かえって僕にはそれが辛かった
TやKの痛みが僕を突き刺す
僕の両親は健在だと言うことが
唯一の救いではあるけれど