二十代半ばの頃…
社会に出て数年が経ち、仕事もプライベートもある意味最も充実していた(はずだ)。
仕事量は今より多かったけれど、それをこなしつつ、僅かな時間を見つけては
自分の作品を作っていたりしたもんだ。
絵や写真の個展や仲間とグループ展を開いたりしていたこともあって
仕事と創作活動が、どちらかに偏ることなくやっていけたのかもしれない。
勿論体力的にもきついものがあったけど
そこはそれ、やっぱり「若さ」で乗り切っていたんだねぇ。
ある晩、といっても深夜に、俺は珍しくオブジェを制作していたんだ。
球体の硬質ゴムにでかいナイフで切り込み加工を施していた、まさにその時!!
うっかりと手を滑らせ、左手首をざっくり切ってしまった(ように見えた)。
そんなに深くないだろうと思いつつ、荷造り用のビニール紐で止血し、
自ら自転車で救急病院へ…
時間も時間だし、切った場所も場所のため
当直の医師は怪しげな視線を俺に向けている。
事情を説明してもなかなか信じてくれようとはしない。
大体、理由を聞くことは後回しで、治療が先決じゃないのか?
ま、多分、傷が大したこと無いのは一目でわかっていたのだろうけど、
暇つぶしに職務質問めいたことすんなっつーの!
たかだか6針縫ってもらうだけで、だいぶ時間をとられてしまった。
時々風呂上りに少しだけ色づいて浮き上がる手首の傷を見ることがあると
今よりフル稼働していた自分を思い出し、ちょっとだけ切なくなる。そしてちょっとだけ可笑しくなる。
知り合いの何人かにも俺と同じような傷を持っている奴がいる。
ただし、それは自らが傷つけたものだ。いわゆるリストカットという奴だ。
彼らは本当に死にたがってそんなことをしている訳じゃなかったろうし、
生きている証なんだ、と言った奴もいた。
あれから15年以上たっている。
俺の傷口は普段は殆ど目立たなくなっていて、思い出し笑いを誘うぐらいのものだ。
だが、彼らの傷は
未だに彼ら自身を笑わせてはくれないようだ。
※画像はちょっと色づけしています。
