今から63年前…ラジオ技師だったある男があるギターを試作し
翌年の1950年に発表したのだが
革新的・効率的な楽器製造であったにも関わらず
当初は「弦のついた板きれ」「パドル」「便座のシート」などと酷評されていた…
そのギターを作った男、クラレンス・レオニダス・フェンダー
つまりレオ・フェンダーその人である
彼が最初に作ったギターは「エスクワイヤ」と名付けられたが
ユーザーの反応は先述したように芳しくなかった
1PU仕様、2PU仕様のバリエーションは
後に1PU仕様を「エスクワイヤ」、2PU仕様を「ブロードキャスター」とした
ところがそのブロードキャスターという名称がグレッチ社の商標だったため
変更を余儀なくされる
因にグレッチ社はBroadkasterで
フェンダーはBroadcasterと綴りが違うのだが
当時会社の規模としてはグレッチの方が大きかったので
争いは避けた方が懸命だったのだろう
今の中国では考えられない潔さかもしれない
おかげでレオはその2PU仕様のギターを
後に「テレキャスター」と名付けたのだった
ここに1冊の古いノートがある
決して順調なスタートを切ったとは言えないレオに
本物の音を知っている、或は自分の音を作ろうとした若者達が
このノートにレオへのエールを綴っていたのだった…
ブルース・スプリングスティーン
キース・リチャーズ
ジェフ・ベック
ビリー・ギボンズ
スティーヴ・クロッパー
ジェームズ・バートン
ロイ・ブキャナン
アルバート・リー
コーネル・デュプリー…
みんなレオのギター、とりわけエスクワイヤやテレキャスターを
愛用していたミュージシャンばかりだ
ノートの表紙には
「TELECASTER FAVORITISM」とある
テレキャスター贔屓といったところだろうか
「TELE-SYNDOROME ENTHUSIAST」はテレキャスター症候群的信奉者か
内容は公にされてはいないのだが
このノートは
レオが最後に設立したG&Lの倉庫でひっそりと保管されていたという…
1991年3月21日、パーキンソン病の併発症で死去、
最期に「世界中のアーティストにしてあげられる事は全部やった」と遺した
Clarence Leonidas Fender / 1909.08.10-1991.03.21