親父は原付バイクで通勤している。
勤め先に行くには幹線道路を走らなければならない。
巻き込み事故にもあったのだろうか。

普段は冷静で、少々のことでは動じない母親が泣きながら電話してきたということは、かなりのダメージがあるのだろう。
生きていないかもしれない。
そんなことを考えているうちに信号が青に変わった。
ハンドルを切る手が変に汗ばんでいた。
いくらも進んでいないのに車がまた止まった。
俺は煙草で気を紛らわせようとしていた。
無意識のうちに出てくる不安な気持ちを吐き出すために煙草の煙を思い切り吸い込む。
「まだ孫の顔どころか結婚式にも出てねーじゃねーか」

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