値上げ…
2006-07-0114歳、中学2年生になって暫くした頃、絵画教室に通い始めた。
お絵かきするためではなく、芸大受験を目指してのデッサンを学ぶためだった。
石膏像や静物を前に何時間も、ただひたすらに鉛筆や木炭で描き続けた。
時折消しゴムの代わりに使う食パンを食べながら目を細め、描いた影の調子を確認した。
教室は大抵4~5人の高校生達が同じように対象に対峙していて、扇風機が回る音と鉛筆や木炭のシュッシュッという音だけがしていた。
夜10時になると年老いた女の先生の「はい、今日はここまで。」という声で張りつめた空気が緩やかな流れに変わる。
かたづけを済ませ、そそくさと教室を出るとポケットに手を突っ込んだ…
あれから26年、高くなったなぁ…でも、止められない…
茶色い弁当
2006-06-30子どもに夢を見て欲しいと願うのは、親やじいさん、ばあさんといった家族だけではないはずだ。
俺の親も俺が子どもの頃は同じように願っていたに違いない…はずだ。
にもかかわらず、俺が学校に持っていく弁当には夢が無かった。
周りの連中は赤や黄色や緑がバランスよく配置されたまぶしいばかりの弁当を自慢げに広げて楽しそうに食っていた。
型抜きされた野菜やタコさんウインナー、冷食のハンバーグやカニクリームコロッケなど、俺の弁当箱には入っていないものばかり。
「俺んちは貧乏なのか?」と真剣に悩んだものだ。
大体俺の弁当に入っているのは炙ったスルメに七味と醤油がかかっているものや、ぜんまいと厚揚げを炊いたもの、れんこんと里芋を煮たもの、鰯や鯖の煮付け…おかずというより酒のつまみ(流石に刺身は入ってなかったが…w)白ごはんのうえにはかつをぶしやとろろ昆布が乗り、これまた醤油がかかっていたりする。まさに茶色の世界…orz かなり長い間そんな弁当ばかり食ってきた。
おかげで酒飲みにはなれたがw
夢を持った大人にはなれていないかも。
今も年老いた母が毎日のように弁当を持たせてくれるが、時々大技を披露してくれる。
うな重弁当(ごはんとうなぎのミルフィーユ?)や、焼きそば弁当(炭水化物しか摂れない…)が最近のヒット作。
最初はついにボケたかと心配したものだ。
おかん、明日も頼むで~
妄想と現実の狭間
2006-06-29人と出会う。
第一印象で大体が決まり、自分の中でそれが覆ることはあまりないそうだ。
それでも心を重ねることで何かは変わるはずだと思っていたい。
こうありたい自分と、こうあって欲しい他者との間に何が生まれるのだろう。
思うようにいかない自分と、思うようにならない他者との間には何が生まれるのだろう。
良くも悪くも人と接するとき誤解が生じる。
思ったよりいい人だった、とか、そうでもなかった、とか。
その人といい関係を持ちたいという気持ちがあることが前提になるが、その誤解を解くにはやはり会話、いや、対話しか無いのかもしれない。
恋人同士ならスキンシップや見つめ合うだけでもいいのだろうけど。
何より君と話せないことが残念でならない。
いつでも話せるはずなのに、その糸口が見つけられない。
俺が見ている夢は、まだ俺にしか見ることが出来ないままのようだ。
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2006-06-27彼女は生まれて初めて夜を買おうと思った
けれどそれが一体どういうことなのか
解らなかった
彼が言ったとおりショーウィンドウには
彼女の求めるものは
何一つなかった
音の割にはスピードのでないバイクで
走り回ることや
知らない男の下で天井を見てることで
夜を買えるとは思えなかったが
彼女の友達の多くはそうしていた
「一体何が必要なんだろう?」
道の端から腰を上げた彼女は
朝がくるまで歩き続けることにした
うちの顧問
2006-06-24うちの会社には顧問と呼ばれる人が2人もいる。
そのうち1人は毎日出勤してくる。
週に1回だけ大学での講義があるとかで(どうも英語をおしえているらしい。)半日休む。
彼は愛すべき人なのではあるが、困ったことに「声の大きい議論好き」なのだ。
こちらが徹夜明けであろうが、締め切り前のピリピリしているときであろうが、
自分の仕事を終えたら平気で議論を吹っかけてくる。
最初は適当に相槌だけうっていればいいのだが、
こちらのストレスが最高潮に達し、(声がでかいのでうるさくて考え事が出来ない)たまりかねて反論してしまうようなことがあれば、少なくとも貴重な2時間は失うことを覚悟しなければならない。
俺が毎晩のように深夜残業しなければならない理由の一つだ。
彼は自分の主張を一通りしゃべると満足顔で会社を後にする…そして俺は I'm worker, hard worker…
そんな彼はクリスチャンで、毎年クリスマスやイヴにはプレゼントをくれる。
去年はひまわりの写真が入ったクリアファイル、
一昨年は昆虫の名前と身長が印刷された下敷きのようなものだった。
いずれも手書きのメッセージがしたためられている。
内容はここでは言うまい…
俺達スタッフは彼の話を聞くことを「老人介護」と呼んでいる…
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2006-06-24或る撮影の帰り道
簡単な機材を背負って自転車を走らせていた
目的地はまだ遠い
頼りのないライトは
仕事を終えた水商売の女のように
走って行く先々を無機的に照らした
何台もの無神経な車が僕を追い抜いていく
そのスピードの差がまるで周りの人と自分自身の
人生の差なんだと言われているような気がした
線路はとても静か
終電車はとうの昔に行ってしまった
ドーナツショップのウェイトレスが
眠たげな瞳をこすっていた
橋の上で
哀しげなストーリーが流れている川を見たとき
昨日の君との少しだけ物憂い会話を思い出した
不安定なスピードで街は流れていく
目に映る全てのものが僕を呼んでいるような気がしたが
手にしたカメラのシャッターを切ることはなかった
部屋について
毛布にくるまった僕は
へばりついた疲労が薄れゆくのを感じながら
無意識のうちに刻み込まれた
このフィルムを
現像することなく
忘れてしまうだろう
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2006-06-24それ以上
煙草で時間を弄ぶことに苦痛な彼は
部屋を出た
疲労をまとったトラックがまだ走っていた
彼は孤独を感じた
暫く歩くと警官が職務質問をしに近づいてきた
「名前は?」
「生年月日は?」
「仕事は?」
「住所は?」
「電話番号は?」
「こんな時間になにをしているんだ?」
彼は目を閉じた
「調律の時期だ。」
oneさんへの返事
2006-06-24おはようございます。
歳のせいか完徹の疲れをひきずったまま今日も仕事です…orz
毎朝覗いてくれているとは嬉しいですw
背筋を伸ばす、久しぶりに目にした言葉です。
子どもの頃剣道を習っていて、その時は先生や、先輩達からよく言われたものです。
そして自分が中学生や高校生になり、先生の補助をするようになると、よく言った言葉でもあります。
その頃は体の中心に一本の柱のようなものが通っていて、ピッとしていたように思います。
今は猫背になって一日中PCにかじりついているような暮らしなので、精神的にも優れませんね。
背筋を伸ばす。いい言葉です。ありがとう。今日も一日がんばりましょう。